プロローグ
「オグナ 避けろ!!」
イズモの声が森に響く。
息絶えたと思われていた横たわる体が、最後の一撃とばかりに闇雲に剣を振るったのだ。
鍛えられた刀筋を避けるのは容易なことだ。しかし、死を目の前にした男の不規則な動きを、とっさに避けることが何故かできなかった。オグナの左腕に深々と刃が突き刺さる。すかさずその敵兵の背中を一文字に切り裂くイズモ。ぐっ、という鈍い声を出した後、さすがに男は動かなくなった。
「オグナっ!」
イズモはすぐさま駆け寄り体を支えようと手を伸ばす、が、その手を激しく振り払われた。そのあまりにも激しい拒絶の様子に一瞬立ち尽くしてしまったイズモを背に、オグナは一人草叢へ歩き出した。
「……気にするな。かすり傷だ」
星が、やけに明るい夜だ。
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