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[大江戸ロケット 銀次郎×赤井]
長屋の日常における とある一景
─01.10.15up 500x285pixel 28kb


 我ながら面白い長家にぶち当たった物だと思う。

 果たして人間なのやらも怪しい謎の御隠居を筆頭に、その御隠居に気に入られれば俺のような者でも自由に住まわせてくれるという、有り難いのやら恐ろしいのやら分からないそのシステム。長家の連中は揃いも揃って陽気な馬鹿ばっかりで、中でもリーダー格であった清吉と言う男がこれまた面白い。頭にバカが付く程花火一筋である彼は、あまりに花火に夢中な余りきっと女の子と手を繋ぐやり方さえ知らんのではと思える程で、思わず何かと御教授致してしまいたくなるプリティ坊やだ。

 そして、長家とは直接関係が無いのだが、もう一人とても愉快な男がいる。八丁堀の旦那。たしか本名は赤井とか言った同心だ。
 俺がこの長家に迷い込んだそのすぐ翌日の事。やっと腰を落ち着ける場所が出来たかと安心して自分の部屋から一歩外に出たところで、路地の果ての果てから、親でも殺しそうな目つきの男が突進して来た、それが旦那だった。
 初見の印象は最悪。なにしろあの目つきだ。ここに場所を構えたばかりだというのに、もう素性がばれてしまった事かと内心がっかりしたのだが、
「お前。見なれぬ顔だな」
と冷徹な口調でつっこんだが最後、俺の返事など一つも聞かずに部屋の中に押し入り、ぐるりぐるりと、それこそ部屋の隅の隅までチェックしたかと思うと
「ふん。部屋は汚れてはいないようだな」
と訳の分からない事を口にした。
「しかし油断は禁物だ。俺の目をごまかせると思ったら大間違いだぞ、覚えておけ」
と、結局俺に一言の反論の隙も与えないまま、すごい勢いで歩き去ってしまったのだった。

何やら怪しい背景は気にするな。汗 (28KB)

 聞けばその人こそ近所では有名な八丁堀の旦那。なんでも極端にキレイ好きな小姑のような同心だそうで、その日は非番ながら“たまたま”近くを通りがかった所、通りすがりの怪しい男(俺の事だ)を見過ごす事が出来ずに声をかけたのだと言う。旦那が言うには、俺の顔は「百に一つの本当も言わないタイプ」なのだそうだ。全く失礼きわまりない。
 その目つきと執拗な性格から、初めのうちはいつ何がばれるかとヒヤヒヤしていたのだが、案外あの旦那は見た目に似合わず抜けた所が多いようだった。なにしろ、その初対面以降、毎日のようにこの長屋経通って来ているらしいその痕跡が、我ら長屋連中に大バレだったからだ。
 やれ井戸の影から覗いていただの、やれ一日中空き部屋にこっそり居座っていただの、口に錠ない長屋連中からは次々と情報が入ってくる。もちろん俺自身も何度も何度も旦那には遭遇している。いや、旦那の目的は俺らしいのだから当然と言えば当然か。
 先日だって、前の夜に知り合ったお姉ちゃんと一晩遊び倒した挙げ句に朝帰りの道を歩いていたら、その始めから終わりまでをしっかり跡付けている旦那の気配が。こちとら闇の気配には敏感なのだから、あれでは気付くなという方が無理な相談だった。全く、あの人自分の仕事はいいのかねえ?と思いながら、あまりに面白いのでそのまま気付かぬふりをして部屋まで帰ったのだけれど。

 さりげなくそんな目撃談を漏らしてやると、旦那はものすごい剣幕でムキになって反論する。しかもそれが的を得ていなかったりもする。
 あの人、どうやら学問の知識と細かな観察力や記憶力には優れているらしいが、役人としての立場はそれほど高く無いらしく、また逆に学問ばかりに傾倒していたからか、まるで行動がお子さまなのだ。
 面白いので旦那の名前は覚えない。あのタイプはからかって遊ぶのが何より楽しいのだ。しかも、あの調子で毎日この長屋にやって来ているようでは、きっと昇進も遠いだろう。つまり、しばらくは時間を気にせず旦那で遊べるということだ。

 旦那には悪いけれど、ある意味この長屋一番のアイドルは彼だ。旦那の話題が出ない日は一日だって無い。こんなに愛されてることに何で気付かないかねえ?と思いつつ。
 この調子ではしばらくの間、旦那ら同心が活躍せねばならんような事件は起こらなさそうだ。長屋の連中も、長屋の日々も。江戸の町には存外に平和な時間が流れている。


ええと、銀赤なんですけど。汗。
私の思う所の二人の関係性を書いておこうかなーと思ったんですけど。
書いてビックリ、想像以上のほのぼの長屋モノが出来上がりました。(爆)
ある意味やるな自分というか、ほのぼの書きの面目躍如というか、
こんなつもりじゃ無かったのにというか。

見事にへたれな感じの赤井さん像になっててゴメンなさいって感じです。
でも私の中ではこんなんで……(証拠の日記を部屋に置いとくような人だもんなぁ)

ちなみに赤井さんは、百に一つの本当のない男が気になって気になって気になって、
死ぬ気で長屋へ通っているにも関わらず
あまりにも銀次郎がこっちを向かないどころか自分の名前すら覚えず、
しかも黒衣衆さえ銀次郎預かりにされてしまった腹いせに事件を大きくしていっちゃう、
という設定です。てへv <てへじゃない。汗