カワイイヒト (another side) ─01.1.23up
* 注 *
別に話が続いている訳でもなんでもないんですが、
同じ世界観の表と裏の作品、ということで、 >>Babylon サマにあります
もうひとつの「カワイイヒト」も合わせて読んでいただけると嬉しいです。
…って書き散らかすなよ>自分。
スイマセン分かり難くて……汗
「まったく、お前は俺達の王様じゃねーんだぜ?!」
亀清はそう言うと、分かれ道のちょうど真ん中で足を止めた。
「どっちの道に進むかは3人で決めればいい事だろ。「ソッチはキケンだから駄目だ」なんて断定されなくてもさ、言われなくてもそれぐらい俺だってわかってるっつーの。わかってて近道急いだほうが得策だって言ってんだよ!」
それはついさっきの出来事だ。今日中に街まで出てしまいたかった俺達は、分かれ道をどちらに進むかなんていう些細な事で揉めたのだ。
亀清は右の道を主張したのだが、蛮門が断固として反対。ついには「俺の言うこと聞けないのかよ!」と大声を出してしまったがために、キレたのだ。亀が。
「だいたいさー、いつから蛮門がリーダーみたくなった訳? 年で言ったら垣吐の方が上だし、剣の腕だって3人ともほとんど変わりねえじゃんか。」
よっぽど不満がたまっていたのか、立て板に水でまくしたてる。
あーダメダメ。頭にきてるのは分かるけれど、蛮門には言えば言うほど逆効果だ。
見ろ。いまだってどれだけヘソを曲げているか。あの蛮門が一言も反撃して来ないのがよい証拠じゃないか。
「なー、垣吐も何か言ってやれよー」
亀清が俺の顔を覗き込む。
…コイツに何を言っても無駄だと言うのに。
+ + + + + +
蛮門はいつも自信にあふれている。
「ね? キモチイイでしょ。」
そうやって断定形で物を言う。
二人で過ごす夜、一体何度同じセリフを聞かされたことか。
だいたいどこからそんな自信が? 何故お前に俺の気持ちが分かる?
相手の気持ちも確かめずに思い込んだまま、人の奥深くにスルっと容易く入り込んで、自分勝手に暴れまくっているだけじゃないのか?
今日こそは、と、口に出して繰り返してみた事がある。
「何故お前に俺の気持ちが分かる?」と。
そうしたら、一瞬 質問の意味を図りかねるような顔をした後、奴はこう言ってのけやがった。
「わかるんだよ、垣吐の言いたいことはさ。顔に書いてあるもん。」
そして。笑った。
そんな馬鹿な答えがあるものか…と反論しかけて辞める。
蛮門の満足そうな笑みを見ていたら言うだけ無駄な気がしたのだ。
抵抗する気も起きやしない。
そうやって自分勝手に思い込んで、明日も明後日も、思い通りの幸せな日々が続いて行くと信じていれば良いさ。
いつか後悔するような事になっても知るものか…。
そう心の中で一人ごちるとその時は、何も言わずに、そのまま、ただ目を閉じた。
+ + + + + +
「何だよ、垣吐までだんまりかよ。もー」
俺が黙っている事に、亀清はますます腹を立てたようだ。
「じゃあもう、いっそ個人行動って事にしようぜ。俺は先行くからな」
そう言い残すと右の道に消えていってしまった。
ああ全くなんて面倒事を作ってくれたんだ、と蛮門を振り帰れば、ふくれっつらのまま膝をかかえて座り込んでいる。完全に、ダダをこねる子供の体勢だ。
無言のまま数歩歩いて横に立つと、蛮門は何か言いたそうな目つきで俺を見上げ、
「かいとぉ…」
いかにも情けない声で俺の名を呼ぶ。
(甘えるのも大概にしろ…)と、わざと目線を外したまま、俺は奴の頭に手を置いてこう言った。
「今度あんな我が侭をやってみろ。明日はないと思え」
できうる限りの真剣な声音で言ったつもりだったのだが、さらに目線を上げた蛮門と思わず目が合ってしまった瞬間、奴は何故か幸せそうに微笑んだ。
そして頭に載せた俺の手をつかむとぐっと体を引き寄せ──あろうことか、キスをした。
「!」
状況が解ってるのか、コイツ。あまりの状況の急展開に付いていけない頭を必死で動かし、やっとのことで質問をする。
「……どういうツモリだ?」
「だって今、こいつカワイイなぁって顔したじゃん」
「え?」
「キスしたいって、垣吐の顔に書いてあったんだもん」
バカな事を。
いいいかげんにしろ。
状況を読め。
次々と浮んでくる言葉を発する事さえできやしない。
ああ。
人間、心の中を見透かされると腹が立つ事を、いつか奴に教えてやらなければ。
|