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[ドラロク1 ノロイ×チェンバレン]
profitroll
─03.9.9up


 珍しいことにデザートのプロフィットロールを目の前にしてノロイは、残り数口が進まずにフォークでシューをつついていた。
 「どうした?」と声をかければ「あまーい…」とぶすくれた返事。確かに少し調子に乗ってチョコレートソースを掛けすぎたかな、と言う自覚はある。ガラスの器の底にたっぷり1cmはたまったチョコを見て、せめてもう少しビターな味付けにするべきだったか、とチェンバレンは後悔していた。しかしカカオ分の多いビターなチョコを使えば、たちまち「苦い」と文句をいわれるのがオチなのだ。ついついミルクたっぷりのスイートなチョコを使ってしまうのは癖のようなもので。
 プロフィットロールとは、生クリームの入ったプチシューを何段にも積み重ねて、その上からチョコレートソースをかけたデザートである。もちろんそんな洒落た名前をノロイが知るはずはなく、雑誌を見て食べたい食べたいと大騒ぎしたのに手を焼いて、わざわざシューを焼くなんて言う面倒なことをしてやったのだ。気まぐれ屋ではあっても、甘いものになら文句をつける男ではないと思っていたのだが…。

 「オレ病気なんだよきっと」
 ぶすくれノロイはまた突然トッピな事を言い出した。
 「こんなちっぽけなシュークリームも食べれないなんて、絶対どっか体がオカシイんだ。それに食べ物残したらバチがあたって病気になって死ぬって爺ちゃん言ってたし」
 テーブルに肘をついて、ノロイは相変わらずフォークで遊んでいる。器の底でチョコレートに埋もれていたシューを突き刺して器の上に高く持ちあげると、たらり、とつややかなソースが滴った。
 「オレが寝たきりになったら看病してくれよなドクター。りんごすって、モモ缶あけて…」
 もはやノロイの口調は瀕死の様相だ。しかし、たかが数口デザートを残したぐらいで寝たきりになられては困る。しかも寝たきりになってすら甘い物を欲しがるんじゃない。まったく…と呆れかえりながら、チェンバレンはある一つの秘策を戸棚から取り出した。
 「……なにこれ?」
 「まあ食え」
 秘策とは、塩せんべい。

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 チェンバレンが顎で促すと、不思議な顔をしながらもノロイはせんべいの袋をばりっと破き、中味をぺろりと平らげた。そしてチェンバレンは次に、お行儀悪くフォークのささったままだったガラスの器をにっこり指さす。何がなんだか分からないという歪んで一回転はしてそうな困り眉のままノロイは、上目でドクターをちらりと見てから、改めてフォークを口に運んだ。すると…
 「うめー!!」
 先ほどあんなに苦戦していた残り3つのシューが今度はあっと言う間に姿を消してしまったのだ。
 チェンバレンにしてみればこうも思った通りだと流石に拍子抜けなのだが、まああれだ、古来から言われる「甘いものを食べると辛いものが食べたくなり、辛いものを食べるとまた甘いものが食べたくなる」と言うヤツな訳だな。いやはや、単純、単純。
 「すっげー!ドクターはやっぱ天才だなっ!」
 こんなあっと言う間に病気直しちまうなんてっ!と妙な感動をしつつノロイはソースの一滴まで綺麗に片付けていた。甘いものの食べすぎか最近弛んできた腹まわりが気になるので、あまり食べすぎるのもどうかとは思うのだが、うん、食べ物は残すとバチがあたるしね。
 まあ、徳用のこの塩せんべいが無くなるまでに自分で気づくようになってくれれば御の字だな、と、大はしゃぎで抱き付こうとするノロイを慣れた手つきで払いのけながら、チェンバレンは遠い未来に小さな希望を託すのだ。


…うし。満足しました。このネタ、実話からなのです。
先日食事したレストランで、デザートにプロフィットロールを頼んだのですが
ほんのちょっぴり自分には多かったようで、残してしまったんです。
それが、悔しくて悔しくてね…
この私が食べ物を残すなんてっ、許せないっ!と悔しさのあまり
せめてネタに使ってやろうと考えたのでした。
甘いものネタなのでノロチェンになるのは当然の流れ。<?
ネタとして消化できたのでやっと満足しました。
これであのシューも成仏できたよね?