Sweet X'mas For You ─00.11.25up
「チェンバレーン!」
なんだか妙に嬉しそうな表情でノロイが駆け寄ってくる。
「ようチェンバレン! あのさ、イイモノあるんだけど…」
「イイモノ?」
ノロイが持ってくる「イイモノ」は大抵ロクデモナイ物であるということは経験上よーーく知っているチェンバレンだったが、とりあえず無視するようなことはしない。
「一体今度は何なんだ?」
「じゃーーん!!」
さも満足げに差し出されたノロイの手には、オレンジ色のテディベアが握られていた。首には赤と緑のリボンが巻かれている。
「なーーカワイイだろっ。いやさ、クリスマスも近いし、いつもチェンバレンにはお世話になってるから年末ぐらいは何かお礼の贈物をしないとーと思って」
「それじゃあお歳暮だろ」
まあ、無い知恵絞って考えたんだろう。ノロイが人にプレゼントを贈るなんてのは、長いドラゴンロッカーズ生活でも始めての経験だ。
「かたいこと言うなって。だってカワイイだろ〜。店で目が合っちゃったんだよ。俺に買って欲しかったんだろうな〜。そう訴えてたんだって」
「ぬいぐるみが?」
「そう。だってさ…このぬいぐるみ、チェンバレンに似てると思わねぇ? なんかさーこの口元が似てるんだよなーーvvv」
そういうと、くるっと後ろへ回り込み、肩を抱きかかえるような姿勢で無理矢理チェンバレンの腕にテディベアを落とした。
その肩を抱きすくめる格好のまま、ノロイは何やら自分の選んだ品がいかに素晴らしいかを語り続けている。が、そんなセリフをいちいち全部聞いてやるような親切心と時間的余裕は残念ながら持ち合わせていない。
しげしげとベアを見つめてみるが、への字口、低い鼻、離れた目。この間抜け面の何処を取ったら一体自分に似ているものなんだ、とチェンバレンは思い悩む。
「……命名。ノロイ」
「え? イヤ俺じゃなくてチェンバレンに似てるかなって…」
「どうみてもこの馬鹿面はお前だ。ぬいぐるみを持ち歩く趣味は無いが、改造の実験台ぐらいにはなるだろう。貰っておこう」
抱えていたノロイのうでを跳ね上げると、すたすたと歩き出す。
「改造って…だからそうじゃなくて、おーいチェンバレンーー!!」
呆然と立ち尽くすノロイを背にそのまま研究室に入り込む。ああ、今振り替えればきっと、奴の背後には大きな大きな「期待外れ」の文字が見える事だろうなと、クスリと笑った。
+ + + + + +
リボンに書かれた言葉は「Sweet X'mas For You」
奴がどんな甘いクリスマスを夢描いて用意したんだかは知らないが、若いカップルでもあるまいし。ぬいぐるみの一つや二つでいったい何を期待していたのやら。
降ってわいたテディベアの「ノロイ」。
……しばらくはコレで遊ばせてもらうとするか。
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