「a solitary island.『1003』」
Written by.彼方 2004年11月18日(木)02:42


なんだか、変な一日でしたね。
ホテルの予約確認もちゃんとしてたのに。

そんなことを考えているうちに何時の間にか寝てしまったようで。
静まり返った部屋の小さな物音でふと意識が覚醒した。
それは悟空が三蔵を呼ぶ小さな声だった。

寝言…ですかね。ずいぶん楽しみにしてたから悟空も疲れたでしょうね。
いつも以上に嬉しそうでしたからね。

何時の間にか悟浄と向かい合う形で寝ていた僕は、何とはなしに寝返りを打った。

寝返りをうった僕の視野にはカーテンを引き忘れた窓から、悟空が絶賛していた月が覗いていて、思わず目を開けてしまった。
そこには月明かりの下で三蔵の首に腕を回そうとする悟空がいたからだ。


「三蔵・・・」


1度、目にすると今度はなかなか視線が外せなくなる。

元々己の感情に素直な悟空は本来、快楽にもタブーが少ない。
三蔵との関係もアピールはしないが、否定もしない。
好きなものは好き。
大人になるとなかなかできない技ですよね。
途中で僕たちを気遣うふりをして悟空を煽る三蔵。
そのくせ騎乗位にさせるんですからいじわるですね。

僕はぼんやりとふたりのそのやり取りに見入っていた。
映画のワンシーンのようなやりとりを。


「・・・なぁ・・・」
「・・・!・・・」

てっきり寝ていると思っていた背後の悟浄に突然後ろから声をかけられた。

「大声出すと悟空が気付いちまうぜ」
「起きて・・・たんですか・・・?」
「そりゃ、こんだけ見せつけられたら当然っしょ?」
耳元で話しかけてくる悟浄の声に狼狽してしまう。
「別にみてたわけじゃ・・・」
「いいんでないの?三蔵だって分かってってやってるんだからさ」
「だからって・・・」
隣のベットにいるのを承知で三蔵は悟空にけしかけているわけだから、当然こうなることも承知しているだろう。
だからと言って見て良い訳ではない。
だが、1度目にしてしまうと視線を外すことができない。
きっと三蔵は気づいている。

「・・・さんぞ・・・だ、め・・」

声を抑える事に必死で普段からの甘えた声が、さらに舌足らずになり本人の意思とは逆に誘惑しているようにしか聞こえない悟空の声。

三蔵はといえば、少年とも青年とも言えない、未発達な体の感触を楽しんでいるようだ。
ともすれば倒れこみそうな悟空を腰を支えて大きく揺する。
「ん・・・っ・・・」
月夜に悟空の仰け反った白い首が浮かび上がる。


「こうやってみてると、チビ猿もなかなかのもんじゃないの?」
背中をつけたまま悟浄がひっそりと話し掛けてくる。
「普段、あんなイメージねぇーもんな」
「・・・そう・・・ですね」

僕たちの知っている悟空は元気に外を飛び回り、太陽の匂いを振りまき、いつも笑顔だった。
こんな顔もするのか…。
僕はなんだか、不思議な錯覚にとらわれていた。

今、ここはどこなんだろう…。
この状況は何…?



「…なぁ…」
また見入っていた僕の耳元に必要以上の吐息とともに囁いてくる。
自然、身体がゆれる。
「あっちに、負けてられないっしょ」
……はぁ……?
「…何を言ってるんですか、悟浄…?」
「俺、もうこんなだしさ」
抱きしめる力をさらに強くして、自分の熱さを僕の背中に伝えてくる。
あなたがそうなっていることくらい気づいてましたよ。
「駄目…ですよ、悟浄」

「でも身体は素直だぜ…?」

何言って……っ……



溺れていく。
誰に?
何に?

……月に……?



The next room?



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