「Who is a criminal?」
Written by.彼方 2004年02月08日(日)19:00


『…また、お鞄は前に抱えるか網棚に…』

悟空はアナウンスされるまでもなくリュックを前に抱えていた。
他人の熱と煙草と化粧。
次の駅から接続の関係でいつも混雑するからだ。

(でも、こーすると自分の足元が見えなくなるよなぁ)
別に困ることはないのだが、いつもやってる事にふと疑問を抱いた。
それはある意味予知だったのかもしれない。

案の定、次の駅から信じられない数が津波の様に一気に悟空を押し潰した。
背が高くない悟空にとっては既に顔までも固定されている有様だ。
そもそもラッシュの時間帯に繁華街で待ち合わせをする大人3人がいけないのだ。

気付くと悟空は自分の目的駅まで開かない扉に押し潰されていた。
窓に顔を寄せると、隙間から入り込む冷たい空気にほっと息を継ぐ。
(終点までこれだと超やだ)
嫌でもなんでも、次の駅でもさらに人は乗ってくる。
慌てて両腕を額の前に置き、なんとか顔が扉に激突するのは免れた。
が腕すら動かせない状況になってしまった。

(・・・あと10分かぁ)
そう思ったときに悟空は異変に気付いた。
(…ケツ、撫でられてる…?)
あやふやなのは混雑しているせいで特定できないのだ。
そうだったとしても男だって分かったらやめるだろ。
そんな軽い思いはあまかった。
相手がすぐに諦めると思い甘んじて抵抗しない悟空に対して、
混雑に関わらず前にも手を伸ばしてきたのだ。
(…マジ?俺男だぜ…!)
相手は悟空が男である事を分かってて仕掛けてきているのだ。
(うわ…どうしたらいーんだよ)
男の自分が痴漢だと騒ぐには恥ずかしい。
かと言ってラッシュのせいで反撃どころかリュックの性で足元もみえやしない。
足を踏むにも相手がわからない。
しかもそのリュックを前に抱えている事によってその下には充分すぎる隙間さえあるのだ。
触るだけだった手が、シャツをかき分けチャックにまでかかる。
流石に大人しく黙っていられる状態では無くなってきた。
「…ちょっ…!」
唯一自由になる口でせめてもの抗議を仕掛けた瞬間、背中から強く押され息がつまる。
その瞬間をのがさず、別の手が悟空の顎をおさえ指をいれてくる。
(…くっ…ひとり…じゃないのか…!)
背中から伝わる熱い体温。
口内は指で犯され、下着の上から揉みしだかれる。
電車の揺れも相俟って悟空はだんだん自分がどこにいるのか、誰にされているのかわからなくなってきた。

(・・・もう・・・ダメかもしれない・・・)

そう思ったときに突然手が離れた。

(・・・え?)

全体重をかけていたドアが開いた。
いつのまにか終点に着いたのだ。
目的駅で扉が開くことを失念していた悟空はそのままバランスを崩し、外にへたれ込んでしまった。
何者かに全開にされたズボンのファスナーは辛うじてシャツで見えない。

「・・・・・・なんだったんだよ・・・・・・」

大半が下車した車内をみても犯人はもう分からない。
悟空はひっそりと着衣を整えると、立ち上がった。
いつまでも呆けているわけにもいかない。

「悟空!同じ電車だったんですね」
「・・・八戒」
「転んだんですか?怪我はないでですか?」
八戒は服の埃を払ってやりながら声をかけた。
心配してくれた八戒に一瞬警戒してしまった自分を認めたくなくて慌てて答える。
「あ・・・だいじょーぶ」
「だっせーな」
「・・・悟浄」
「なんだ転んだのか?」
だっせーと言いながらも悟浄は悟空のリュックを持って、悟空の肩を抱いて歩き出そうとした。
「注意力がなさすぎなんだよ、テメーは」
「あ・・・三蔵・・・」
駆け寄った悟空の頭を三蔵はくしゃっと撫でた。

「なんか・・・3人とも・・・変、じゃね・・・?」
(考えたくねぇけど、さっきのって・・・まさか・・・だよな・・・)

「さ、行くぞ」
「そうですね」
「っしゃ!」
「・・・・・・」

・・・・・・犯人は誰・・・なんだよ?



・ 書きビトコメント ・

 ●余りの電車ラッシュでこんな事考えてる女ってどうなんですかね(笑)
 ●そして書いてる途中で何となく自主規制してしまいました。自分に何でだろう?

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