「元旦」
Written by.部長 2004年01月27日(火)01:55


「元旦って、家の近所は意外と静かですよね。」

連れられるままに土手っぷちにきた。

一年の始まりは浮かれるのが義務だと言わんばかりのブラウン管から放出されるむやみな熱気を奴は躊躇無く長い指一本で抹殺する。そしてここには、熱を保有する物体を拒む硬質の静寂が広がっている。

おなじようにつったっている八戒の頬をまだ午前の堅く研ぎ澄まされた空気がかすっていく。
  
 何気なく横顔を見た俺は、気づいちまったんだ。

 それは、眼だ。

八戒を拾った時の死の影はありがたいことに浮かんでいない。だがそこにあるのは三蔵崇拝を信じ込む眼でも、悟空の運命を思いやる慈愛でも、花喃に馳せる為すすべもない想いでも無かった。

朝日の方角を見据えている 緑のそれ を俺は知らない。

「…太陽、かなり昇っちまったな。」

 なに言っちゃってんだ俺は。
的外れすぎるセリフの裏で、正直に言うと…びびってた。
これにぶち当たらないように、家に寄り付かなかったんだ。

 あいつは、何かを決めやがった。何をだ?いや知ったところでこいつは俺がすること一切がっさい拒むだろうが。

てめえの事さえ興味ねえのに、八戒の何に口出せるってんだ!
奴にべったりくっついて監視すりゃよかったのか?心にもない励ましとやらを吹き込めばよかったのか?生きてるって居心地悪さを生活の煩雑さに紛らわしてよ…見てられねぇよ。
 もう理由なんざ何だっていいから今を、世界を、この生活を、俺達を、選んでくれ。

ぐるぐる自分の声が頭ん中を乱反射する。
フィルターを噛み締めたまま息をつめた。

「初日の出、見るつもりもなかったんでしょ? 別にいいじゃないですか。
 そんなことより悟浄…いまさら面倒なのは解っているはずです。
 僕、ふつつか者ですが、今年も宜しくお願いします。」

…それは、その笑顔はどう表現していいのでしょうか?八戒。

すくみあがっていた体が崩れ落ち、土手にしゃがみこんで頭を抱かえる。
「ったく。なんだよっ。」
誰が面倒なんだぁ?俺かてめえか?俺は自分からも他人様からも逃げてもいいんだよ優しさなんだから。なのにわざわざ追い込んで自覚させられてなにやってんだ?

 場違いなほどはしゃいだ声をあげた八戒が、白い息をはく。

「うわぁ寒いですね。帰って燗でもつけましょうか。三蔵からいただいたお歳暮があるんですよ。
 どうしたんですか悟浄?耳が赤いですよ」

わざわざしゃがんで耳元でささやくなっつーのバカ。



・ 書きビトコメント ・

 ぎゃ〜!!またもや中学生日記かおのれは!…弱弱をとめちっく悟浄です。
 正月書いて中途半端に放置してたやつに手を加えまし…加えられませんでした(涙)
 精進しますうううっ。

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