「君に染む」
Written by.綾瀬 2004年03月25日(木)04:53


グレーとピンクは意外と似合う。
なんてことを考えながら曇天に洗濯を干す。
「なあってば」
そもそも洗濯をしようと外へ出た所にこの曇り空で、その時から幸先の悪さは予感してたんです。
「俺が悪かったって」
悪かったなんてそんな。僕は全然気にしてませんよ。
「今度から絶対ちゃんと分けて入れるから」
あんまり見事にピンクだから、かえって見惚れているぐらいです。
「そんなに色落ちすると思わなかったんだって」
このシャツ、まさか最初は真っ白だったなんて信じられないですよね。怒ってないですってば。でも僕、ピンクって似合わないんですよね…
「ほんとゴメン。……新しいシャツは弁償するから。許して」
そこまで言うなら仕方ないですね。
買いに行きましょうか、新しいシャツを。

それはほんのつまらない出来事。新しく買ったばかりのカラーのジーンズを、何も気にせずぽいと洗濯機に放り込んでくださった悟浄のおかげで、八戒のお気に入りであった白いシャツがピンク色に染まったというだけのこと。

「そんでさ。買い物につきあうのは全然文句ないんですけど、何で俺がこのピンク色を着てなきゃいけないんでしょーね?」
なんかこっちの方が罰っぽいぞとぶつぶつ言う悟浄を横目で見ながら、八戒は上機嫌で売り物の服を吟味する。
「だって勿体ないじゃないですか。もともと少し大きめでしたから悟浄でも充分着れてますし、綺麗に染まってますからはじめからその色だと思えば問題なしです」
「じゃあ自分で着ればいいじゃん」
「言いましたよね? 僕、ピンク似合わないんですよ」
と笑う。
悟浄はその色も似合いますね、と言いながら、手に取ったシャツを眺め、体にあて、鏡を覗き、そしてやがて、手には一枚のシャツが残った。
「やっぱり、これに決めます」
それを見た悟浄の顔と言ったら。
「…え? 意味わかんないんだけど」
「これにします。これ買って下さい」
楽しそうに、笑う。

帰り道は二人揃ってピンクのシャツ。
「新しいの買ってやるって言ってんのにさ、なんでわざわざそのピンク色を選ぶ訳よ?」
「いいじゃないですか。ピンクも着てみたい気分になったんですよ」
それにわざわざ着て帰ることもねーだろーよ、なんて、相変わらず悟浄はぶつぶつつぶやいているけれど。
いいじゃないですか。だって。欲しかったんですよ、このシャツが。
ペアルック、なんて言い方はもう古いですよね。だったら…そうですね。
このシャツだったらこれからも存分に、貴方のと一緒に洗濯機がまわせる、なんて理由はいかがですか?



・ 書きビトコメント ・

  ホワイトデーに三蔵一行からもらえる、というポストカード。もちろん部長宛に届けてもらったのですがそれを見ての皆の一致した感想「八戒ピンク似合わねー!!」
 で、それを見たHALさん主張するに「絶対これ自分で買ってないよね」。そこから妄想発展しそうになるところを、私が引き継ぎました。……たぶんHALさんの妄想はこうじゃなかったことは自信あるな!(<威張るな)
 洗濯をしてて、ビックリするくらい綺麗に色移りさせたことが実は実際にあります私。元が白とは絶対に信じられない薄緑のバスタオル、今でもちゃん使ってますとも。

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