「VITAL POWER」
Written by.綾瀬 2005年11月01日(火)04:17


 「死ねーーーっ!!!」
 と言われるのは日常茶飯事だ。…って事は流石にないかもしれないが、敵さんがいつ襲ってくるかわかんない旅の途中なんで、まあ、突然言われても驚かない程度には慣れている。ただ、
 「殺ス(額に怒りマークつき)」
 や
 「一遍死んでみますか?(こっちは満面の笑みで)」
 なんかは少しばかり状況が違うというかこちらの受け取る気持が違うんでカウントには入れないどいて欲しいし、それに、
 「なー。ほんとにゴキブリって殺しても死なねーの?」
 と純な顔で聞かれると流石に俺も哀しくなっちゃうわけよ。
 死ぬよ。

 「比喩だっつの。分かる?お猿ちゃん?」
 「そうですよ。僅かな水だけでも1ヶ月以上生きられる素晴らしく効率の良い身体構造とか、計算上年間で1匹が2万匹にまで増える高い繁殖能力とかで、種としての生命力が強いってだけで。流石に個体は死にますよ、悟空」
 そうそう。ってかゴキブリに詳しいな八戒。
 「ホントに殺っても死なねぇのはコイツだけだろ」
 だから死ぬっつの。
 お陰様でゴキブリという異称を欲しいままにしている俺様ですが、その呼び方についちゃあ言いたいことは山盛りありますけどね、“殺しても死なない男”という称号はまあ悪くねーかなと甘んじて受けている。ただ、別に俺、殺されても死なない訳じゃ決してないと思うのよ、いや、個体として死なない訳じゃないってことじゃなくて、ただ、逃げるのが上手いとか思い切りが悪いとか、なんていうか単に“死ぬのが下手”なだけじゃねーかなって……
 タイミングが。いつも遅い、俺は。今だってほら、反論するタイミング見事に逃したし。事が済んで、終わってから少したって冷静に考えて。あ、あの時がいいタイミングだったんじゃ、もしかしたら俺、あそこが死ぬ場面だったんじゃ?って思った事が何度かあった。や、最近じゃねーけどな勿論。昔な、何度かな。うん。一度失うとタイミングってのはどんどん合わなくなっちまうもので。
 「ふん。そういう意味じゃコイツの方が若干優れてるって訳か」
 いや、だからさソレ……えっとその。
 「そうですね。本当にこの人、殺しても死にませんから」
 うんまあ……いっか。そういうことでも。



・ 書きビトコメント ・

 今月号のゼロサムの、5&8好きへのプレゼントとしか思えないその展開において、「殺しても死なない人って悟浄じゃんそれっ!」と読んだ10人中の12人が思ったに違いないので敢えてそんなことは大前提として、妙な所に反応して小ネタ化さしていただきました。
 悟浄は弱々なとこがラブです。

 ちなみに余談ですが、悟空が「死ね」だの「殺す」だの言う場面はどうしても想像できませんでした。なんでだろ。悟浄とケンカは一番してると思うのにね。カミサマ編で悟浄失踪後に「ブッ殺す」と叫ぶあのシーン、アニメで悟空の声が混じってて違和感あったんだよなー私、そういえば。

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