09/21「月と待つ。」
Written by.部長 2004年09月22日(水)04:05


猛暑記録を更新し続けている日中が思い出せないくらい、月は冴え冴えと輝いている。
あいつの日にしては申し分ない。
待つのは得意だが、好きじゃない。開かない家の扉の前で散々待った。
自分を閉め出した扉の向こうでなにが起こっているかなんて、考えてはいけない、何も見えない、何も聞こえない。
頭と心を無にして。紅い月を見上げていた幼かったあの頃。
そして今度は、開かれない扉の中で待った。俺を残して行ってしまった人を、戻るはずのない人を。月光さえ差し込まない場所で。
あいつはいずれ来る最後の日を待っていて、俺は今日戻ってくるあいつを待っている。
待つことが意外に楽しいだなんて、今知った。

「なにやってんですか、こんな所で。」
玄関の扉前に座り込んでいる悟浄を見下ろす。
「今日は日付まわるって朝にちゃんと言ったじゃないですか。」
「ん〜。」
「あ、また鍵を無くしたんですか?そんな貴方のためにわざわざ連想しやすい鉢の下にスペアを置いてあるのに忘れましたか」
はいとスペアキーを渡される。
「にやついてないで、どいて下さい。」
相変わらずしゃがみこんだままの悟浄が咥え煙草で見上げている。
「覚えた?」
「は?」
「今日の俺のツラ覚えたかって言ってんの。」
「…悟浄、もう付き合いも長いんですから、いい加減顔くらい覚えますよ。」
間近に突っ立ったままの八戒の腕を引きよせ、
「じゃ、忘れんな。んで何より先に思い出せ。」
耳元で言葉を噛み締める。
「命令形ですか。」
膝を折り、悟浄と同じ目線でいつもの笑みを浮かべている八戒の頭を片腕で支える。
「今日さ。一番乗りなんだぜ俺。だからプレゼント」
―今日に一番乗りで八戒の誕生日を待っている俺を思い出せ。来年も再来年も。
過去を思い出す前に。扉を開ける前に。
俺は待つのが得意だから。いつだって。



・ 書きビトコメント ・

 ―ねむーい!なんだかよく解かんね〜。
 八戒と誕生日にね、待ちつ待たれつしたかったの!
 とにかくおめでとうです、八戒。幸せに近寄れ。

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