「八重紅枝垂」
Written by.彼方 2004年03月31日(水)15:45


「なぁ、八戒。桜ってどんくらいもつわけよ?」
「桜、ですか?」

「そうですねぇ。一般的には1週間くらいって言われてますね。」
「そんなもんか」
「えぇ。今日あたり風が強いですから、本当に桜吹雪って感じですよね」
「だな」
「どうかしたんですか?」

「あれ」

悟浄が顎でさした方向を見ると窓辺で桜を眺めている子供がひとり。
知り合ってまだ間もないが、保護者の生臭坊主はともかく、この子供にはふたりとも気に入っていた。

「ずーっと、見てるわけよ。桜」 
「何でしょうね?」
「だろ?三蔵様がいなくて淋しいのかねぇ」
「それは淋しいでしょうけど。今までもこれくらいの期間の不在はありましたよね」
「だろ?なのに今回は大人しいんだよなぁ」
「約束・・・でもしていたんですかね」
「何の?」
「この場合、お花見・・・ですか?」
「花見、ねぇ」

開け放たれている窓から一陣の風と共に桜の花びらが入って来る。

ふと窓辺にいた悟空を見ると、そのまま寝てしまったらしい。
八戒と悟浄の口元に自然と笑みが広がる。
子供とは不思議な存在だ。

悟浄は今まで気付きもしなかった自分の感情に苦笑しながらも、
ベットに運ぶべく小猿を抱き上げた。

「悟空じゃないですけど、三蔵はいつ帰ってくるんでしょうねぇ」
 ま、僕としてはこのまま引き取っても良いんですけどね。
 きっと手放さないでしょうね、あの人。

「さぁな。そろそろ帰ってくんだろ」
 前に声が聞こえるって言ってただろ、三ちゃん。
 今、すんげーうるせーんだろうな。
 って事はそろそろ帰ってくんだろ。

「そうですね」
ふたりは悟空の寝顔を見てもう1度笑った。
八戒は寝汗をかいて顔に張り付いた髪を掻き分けてやる。
悟浄は抱えなおすと、そのままドアを抜けた。


そして八戒は、悟空の変りに満開に咲き誇った濃い桜を眺めた。



・ 書きビトコメント ・

 ●悟空至上主義ですんません。
 悟浄と八戒が夫婦状態っす。そんな二人が好きですわ(笑)
 しかし、三蔵様を出せなかった…

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