<< back
index
next >>


 
===================================
Home Sweet Home [2001年10月26日01時39分]
===================================
 一応ここは社長室と名がついている筈なのだが、そんな事を気にする様子もない男が一人。
 「あーーー疲っれたあーー」
 ドアをばーんと大きく開き、荷物はどさっと床へ。2泊3日の出張旅行から帰って来た男はそのまま、たしか応接用にという名目だった筈のソファにぽーんと身を投げ出した。
 出張の成果が上々だったことは、先程あった先方からの電話で分かっている。だからこそ安心して今日中に片付けてしまいたい仕事に没頭しようと心掛けているのに、奴は暢気に話し掛けてくる。
 「やーっぱ、慣れて無い事すると疲れるわー。だからオレに出張行かせるのは良くないよ、て忠告したはずだったんだけどねぇ」
 いいから黙って仕事させてくれと思いつつ、でも言わずにはおられない。
 「そうは言うが、出張の原因を作ったのは自分だろ? お前がいらん事次から次へくり出すから、わざわざ向こうさんの本社まで行かなきゃならなくなったんだ。自業自得だな。だいたい………」
 と、言葉を遮る健三の声。
 「あー、やっぱコレだねえ!」
 「……? なんのことだ」
 「コレだよコレ。やっぱさあ、会話にはツッコミがないと潤わないんだよねぇ。オレって関西出身じゃん? そのへんダメなのよ。分かってないよね、あっちの人は」
 「………お前が行ったのはツッコミの本場大阪だったはずだが?」
 「あーそうそうコレコレって感じーーvv やっぱ結城ちゃんのツッコミが最高だねっ。あー癒されるわー。」
 
 そりゃ、ボケた発言にツッコみたくなるのも同じく関西出身である自分の性だし、長年つちかわれて来た二人の慣例ではあるのだけれど。なんて新手な技を考え出してくれたんだコイツは。
 「あ、そうそう、コレ出張土産ね」
 と、取り出した箱は「東京ばな奈」だったりして。
 (東京に東京みやげを買って来てどうする)と、言いたい事は沢山有るけれど。ちくしょう。
 ツッコめばツッコむだけあいつを喜ばせるなんて。
 こうなったらもう、こっちは何も口に出来ないじゃないか。