「a solitary island.『1001』」
Written by.彼方 2004年05月24日(月)01:13


ことの始めは悟浄と八戒が何だかんだ言ってよく遊びに行く事。
いつもおいていかれる事。
あとは4人で出かけたいと騒ぐ養い子に、生臭坊主が折れた事だった。
保護者が折れれば、残る大人はこのやんちゃな少年に甘い。
どこで遊ぶだの、どこに泊まるなど、あっという間に計画は決まり実行される運びとなった。



「え?部屋がとれていないんですか?」

八戒の問いにフロントマンは困惑したようにパソコンに操作しながら答えた。
「申し訳ございませんっ。ただ今確認をしているのですが・・・」
「確か3日前に確認の電話をした時は取れているというお話でしたが」
「はい・・・」
押し問答を続けても仕方がと判断し、八戒は少し待つ旨をフロントマンに伝え
三蔵たちが待つロビーに戻った。


「お待たせしてすみません」
「どうしたんだよ、八戒?」
戻ってきた八戒の様子を敏感に悟って悟空は駆け寄った。

八戒は悟空に甘い。
弱いと言ってもいいかしれない。
子供が好きな事もあるが、素直に感情が出せる悟空が羨ましいとも思っている。

「それがですね、部屋が取れてなかったんですよ」
困った顔で、それでも笑う八戒の言葉がよく分からないのか
悟空は小首をかしげた.
「おいおい、マジかよ。お前ご丁寧に確認の電話までしてたろ?」
数日前に丁寧すぎるとからかっただけに、悟浄も覚えていたらしい。
「えぇ。正確に言うと1部屋しかとれてなかったんですけどね」
「なんだぁ、このホテル」
悟浄の言い分はもっともだ。

窓からは海と山。
孤島のホテルというキャッチフレーズでひそかなブームを巻き起こしているこのホテル。
なんでも1年先まで予約がいっぱいだとか。

八戒のやつ、どうやってとったんだか・・・

ソファに座っていた三蔵は煙草の煙を吐いてからふたりを見上げた。
「・・・連休の谷間とはいえ、今から移動しても取れんだろう」
「移動がまずできないっしょ」
「そうなんですよね」
「なんだかなぁ」
さぁ、どうしたもんか。


「・・・・・・なぁ?」
3人の話しを静かに聞いていた悟空が八戒の服を引っ張る。
「なんですか、悟空?」
「1つは部屋があるんだろ?そこに4人で泊まっちゃダメなわけ?俺、別に床でもいいぜ」
「4人で・・・ですか?」
このホテルは孤島にあるだけあって部屋が広い事で有名だ。
第一、非はホテルにある。
悟空の提案も悪くはない。

そこへフロントチーフらしき人物が現れた。
「この度はお待たせして申し訳ございません」
「おにーさん?4人で泊まるってあり?」
「それは、もう。こちらの不手際ですので」
「んじゃ、決まりだな」
「・・・そうだな」
「マジ?マジ?」
「大マジだぜ、なぁ三蔵様?」
「あぁ」
「よかったな、八戒」
「そう・・・ですね」

無邪気に喜ぶ純粋な子供と素直じゃない大人ふたり。

「後ほどお詫びの品などをお持ちいたします」

丁寧すぎるフロントの対応を受けながら、もうひとりの素直じゃない大人は何かがひっかって仕方がなかった。
が、はしゃぐ悟空に引っ張られるうちに気のせいかと頭の隅に追いやってしまった。


   The next room?



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