「影送り・3」
Written by.彼方 2004年01月26日(月)23:05


らしくない三蔵の行動に呆気にとられた悟浄と八戒も我に帰り後に続く。

飛び出した三蔵はどうやら自分の部屋に戻ったようだった。
締まり切っていない扉から見えたのは、以外にも三蔵の腕の中で震えている悟空の姿だった。
「…悟空…?…」
あまりに普段とは掛け離れた姿に愕然とする。
三蔵の腕の中で肩を震わせているのは本当に悟空?
「…おいおい。一体どうしたってんだよ、三蔵?」
こんなはかなげな悟空も初めてだが、自分たちの前でここまで悟空を比護する三蔵も見たことが無い。
今にも崩れそうな体を支え、落ち着かせる為に頭を撫でる姿は駆け付けた二人に沈黙を与えるには充分だった。
震える悟空の耳元で何かを呟いているが2人の耳には届かない。
悟空が徐々にだが落ち着きを取り戻し始めると、三蔵は窓を見て、そのあとドアを一瞥した。
「・・・・・・・・・」
「…行きますよ、悟浄」
「はぁ?」
八戒は静かに扉を閉め、自室に戻ってからゆっくりと話し始めた。
「悟空はまだ雪が恐いんですよ」
「はぁ〜?」
やはり何も分かってないのだ、この男は。
「僕たちは・・・」
脳裏に焼きついた悟空はやけに小さく思い出される。
「僕は・・・あれから随分たってますし、今までそんなそぶりも見せなかったからてっきり克服したと思ってたんです」
「昔はすき焼きでつったよな。もっとガキだったもんな」
「そうですねぇ。でも、それは僕等が…三蔵がそばにいたから今まで平気だったんですね」
「って事はあれか。あのチビ猿は起きてみたら雪は積もってるわ、三蔵様はいないわでパニック起こしたのか?」
「えぇ。三蔵には聞こえたんですね、悟空の心叫びが」
「心の叫びねぇ」
紫煙のゆらゆらと天井に昇っていく。
八戒は煙草の煙の向こうに何かを見た。
「・・・もし・・・もし僕が・・・」
僕が悟空みたいに呼んだら薄情なあなたは気づいてくれますか?
「ちゃんと気づいて助けただろう?」
「え・・・」
「だから今、俺たちいるんじゃねぇの?」
だろ?っと当たり前のように答える。
「たまに思うんですけど、あなたはずるいですね」
「惚れ直すだろ」
「そうですね。自分のセンスに自身を持ちますよ」
「早く復活しねぇかな」
「どっちが?」
「勿論、どっちも」
「ですね」

ねぇ、悟空?
三蔵も僕たちもあなたから離れたりしませんよ。
早く青空の下で元気に飛びまわれるようになってくださいね。
そうだ。春になったらまた影送りをしましょう。
4人の影を空に・・・空で自由に飛ばしてあげましょうね。



・ 書きビトコメント ・

 アニメの放送を見た後無性に書きたくなりました。
 で、青い空も絡ませたかったから、子供の頃やった遊びを混ぜ混ぜしました。
 絵本があった気がするなぁ。うろ覚えですんません。
 ちなみに本当は39が書きたかったので書くことにしました

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