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オウンゴール・その後
─02.6.30up


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オウンゴール・その後 [2002/06/06/(Thu) 01:19]
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 そういえばあの後、どのくらいの時間がたった頃だったろうか。
 「あ、サッカーどうなったかな」
 とソファに身体を起こすと、健三はテーブルに置き去りにされていたリモコンを持ち、スイッチを入れた。
 「わー、日本勝ち点1だってさ!」
 もちろん俺はせめてもで、精一杯の不機嫌な声で返してやった。
 「それがどうした。」
 が、健三はそんなことを気にしてくれちゃう奴では無かったのだ。
 「てかさ、勝ち点って、何?」
 後頭部めがけて、げんこつを一発。


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オウンゴール・その後のその後 [2002/06/14/(Fri) 18:15]
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 続く対ロシアのグループリーグ第二戦。しつこく断ったにもかかわらず結局この日も健三は我が家でおおはしゃぎで、これは日本にとっていかに記念となる一勝かというのを夜もふけきるまで語られてしまった。
 おかげで月曜日はへろへろ。おまけに次の試合は平日昼間。
 その日のミーティングで健三は、次こそ予選突破のかかった大事な試合、金曜日は休みにするべしと声高らかに主張してくださった。が、いざ私がその日に入っている業者との打ち合わせの予定を指摘してやると意外にあっさりと身をひいた。(そりゃそうだ、自分で決めてきた仕事だ。自業自得)

 結局運命のその日、健三は昼過ぎには会社を出た。
 彼がいるといないとでは社内の喧騒は倍ちがう、が、今日はさすがに他のメンツも落ち着かない様子。かく言う自分も、パソコン画面の右下隅に小さなウィンドウが一つ、即時更新される結果速報のページがひっそりと開いてあった。
 先発発表、キックオフ、0-0のまま折り返し…そして後半に入ってすぐ、ウィンドウに躍った“ゴール”の赤い文字。その文字はもう一度光って試合が終わった。
 木太郎さんの机から小さな「よしっ」と言う声が聞こえ、見ると神崎さんもラジカセのイヤホンを耳ににこにこヒゲをいじっている。結局みんな仕事にならなかったらしい。お互いに目配せで笑いあう。
 次の瞬間携帯の着信音がなった。健三からだった。いやな予感がしたが、とりあえず出る。
 「はい、結城…」
 「すごいよ!予選突破だってよ結城ちゃあん!!! うわー、今晩そっち行っていい?」

 後で知った事には、その日健三は相手先社内での一大演説会の末、向こうさん全員巻き込んで試合観戦していたのだそうだ。このことで後日余計な仕事が増えた訳だが、この時はそんな事知る由もなく、たった一言返すのが精一杯だった。
 「来るな」と。

 「おっけー」と言って電話は切れたが、運悪く時しも週末。この調子ではまた今夜も眠れそうにない…と天を仰いだ。


>>さらに続く。