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桜吹雪 [04/09(Wed) 13:23]
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 「一体ドコ通って来たの?」と、天権はさらりと頭をなでると一枚の花びらを開陽の目の前に差し出した。「すごいよ、頭の後ろいーっぱい」

 「表の並木を歩いて来ただけだ」
 目線をどこか遠くに飛ばしたまま開陽は答えた。
 「あの並木、桜だったんだな。知らなかった」
 「ふーん。桜なんて咲くんだあそこ」
 「興味なさげな口ぶりだな」
 「まあねえ。だってさ、花は食えないし」
 「お前も花より団子か」
 「あ、それもパス。俺甘いものダメー」
 好きも嫌いも一刀両断の彼らしい答えに苦笑する。
 「花も食べ物もだめか。天権が心動かされるものは一体何なんだろうな」
 「うーん、花より団子より花、つかむしろ俺が花?ってね☆ あ、安心して、開陽のことはちゃんと好きだから」
 あくまで調子を崩さない天権の言葉の間にも、開陽の目線はいつのまにか遠くを泳いでいる。見えぬ桜花をまだ見つめているのだろうか。
 「どしたの? なんか変だゼ開陽。そんなにすごかった?桜」
 「…ああ、すごかったよ」
 そういう開陽の目線はまだ桜の木の元。少し笑って天権は言う。
 「だろうね。こんだけ降り積もらすぐらい見つめてたんでしょ。よっぽどなんだ」
 そういいながら、また一枚花びらをつまんだ。
 「──本当にすごかった。花の散るさまには見えなかった。まるで」
 と言いかけて口をつぐむ、まるで、まるで何だと言うのだろう。
 「変なの。」と開陽の銀の髪をさらさらと遊んで花びらを床へ落とす。
 「まだついてるよ。落ちた桜をたどってけば、しばらくは開陽がどこ歩いたか一発でわかるね」
 床に点々と広がる桜花。
 まるで。降りしきる桜はまるで、割れた鏡のカケラの様だった、と。
 なぜか心に浮かんだその不穏な思い。鏡?鏡とは三界魔鏡のことか? 割れるとは?どういう意味? これは…未来?
 広がる暗い影を振り払おうと開陽が強く頭をふると、また一枚、桜の花びらが床に散った。