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rampageous [06/26(Thu) 19:19]
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 垣吐が暴れている。
 この場合きっかけなどはどうでもよい、と言うか、蛮門にはそのきっかけ自体がそもそも分かっていないのだから考えようがない。とにかく今、垣吐は暴れている。
 「なんなんだよっ俺なんか悪いことしたかー?!」
 大声を出しているのは一方的に蛮門で、垣吐はただただ無言で蹴りやらパンチやらをくりかえすのみだ。蛮門は今のところすべての技をガードしているが、このままではやばい、と思う。とにかく垣吐が暴れ出したら手をつけられないのだ。
 「ち、ちょっと落ちつけって。目が怖いよ垣吐ー!」
 そもそも一つや二つの技がヒットした所で、無駄に頑丈にできている蛮門にダメージなど与えられない事は垣吐も承知だ。まあそれが分かっているからこそ本域で殴りかかっているわけだが、流石にすべてガードされるこの状況は火に油らしい。そもそも筋肉バカの蛮門とは体格の差も歴然な上に、15cmもの身長差という二重苦なのだ。小柄な事を生かした技のスピードで戦いは拮抗してはいるものの、いかんせんリーチが足りない。このままでは奴には勝てない。垣吐はそう判断すると、殴りかかろうという体の動きをいきなり止めて身を小さくかがめた。
 「うわっと」
 不意をつかれて蛮門が前のめる。よろよろっと動いた足元に垣吐はさっと滑り込んだ。蛮門の懐に入り込んだ形になった垣吐は、上空でばたばたと手を動かし慌てる情けない顔を一瞬みやると、腰に付けられた蛮門の刀を鞘ごと抜き取る。そして力いっぱい脇腹を欧打した。
 「…ってえー!!」
 鞘付きの刀とはいえ、殴られれば痛い。さすがの蛮門も脇腹を押さえて座り込んでしまった。かわりに大声をだす。
 「なんなんだよもうっ。なんも言わないで暴れるのはヒキョーだって言ってんじゃんかさー! そういうヒキョーモノはなあ、えっとなあ、その…なんだ…アレだよ」
 後半になるにつれて言葉の濁る蛮門に垣吐は再びキレる。
 「言いたい事はまとめてから口を動かせ!!」
 そう叫んで今度は蛮門の脳天に鞘を振り下ろした。
 いってぇ…とちょっと涙目になりながら呟くと、頭をかかえたまま蛮門はすっくと立ち上がり、一度すうっと息を吸い込んでから思いっきり大きな声で反論した。
 「垣吐の、バカーっ!!!」

+ + +

 「馬鹿って言う方が馬鹿なんだよーん」
 戦いの場から安全圏まで、きっちり100メートル離れた場所で亀清はひとりごちた。
 だーから垣吐に“かわいい”は禁句だってのに、なんで学ばないかね馬鹿蛮門は。と思う。
 「俺のが知恵あるっつの」
 キーワードを聞いて怪しい気配を感じ取ったらば、すかさず安全圏まで身を隠すぐらいの芸当はできる。木の幹に背をもたれながら戦いの様子を涼しい顔で眺めると、相変わらず騒ぎたてるのは蛮門の方ばかりのようだ。
 「ちっくしょー、垣吐のばかばかばかー! 馬鹿垣吐ー! おにー! おかっぱー!」
 貧困な上に訳の分からないボキャブラリーでわめき散らす蛮門に、ますます不機嫌そうな視線をおくる垣吐の空気を敏感に察知すると亀清は、これはもう100メートル離れといたほうが無難だな、と、寄りかかっていた木からよいしょっと背を離して歩き出した。